西太后に肝を冷やした話《暗雲編》
2011-11-01
(前回よりつづく)
幾度かの打ち合わせを経て、清朝末期の政治を追いつつ
現代中国にも残る風習を紹介する方向で固まる。
なかでも西太后の美容術がおもしろいということになり、
母乳を取り寄せて飲んでいただの、
玉(ぎょく)で美顔ローラーを作らせただの
真珠の粉を化粧品にしていただの…
といったエピソードを盛り込んで番組を構成することに。
この段になって初めて、少々高い本も「えいやっ」と購入し、
がっつり国会図書館にも通い、資料は段ボール箱いっぱいに膨れ上がる。
北京のコーディネーターとのやりとりあり、
ロケも編集も怒濤のように進み、つつがなく放送に漕ぎ着けた。
ほっ。
オンエア後、「お疲れさま~」と軽やかに去っていこうとするわたしを
ディレクターが呼び止めた。
放送を見たという、どこぞの真珠屋からテレビ局に電話がきたらしい。
「西太后が真珠の粉を化粧品に使っていたという話を
我が社の宣伝に使いたい。ついてはネタの出典を教えてほしい」
というご要望らしい。
ハイハイ、喜んで…と気軽にお答えしようと思ったのに
資料箱をいくらひっくり返しても、その逸話が載ってる本が出てこない。
「あれ、おかしいなぁ。探しますので、しばしお待ちを…」
仕方ないので改めて、国会図書館へ。
放送まで済んだ番組のために、時間と交通費をかけて
図書館に出向くほどムナシイことはない。とほほ。
で、片っ端から西太后関連の資料を確認するが、
くだんの「真珠ばなし」、まったく見つからないのである。
どうしよう!?
だんだん、泣きたくなってくる。
プロのリサーチャーが「ネットでみつけたエピソードです」なんて
口が裂けても言えないよ~~~(涙)。
つづく