スタントマン
2013-02-21
待ち合わせは駅の改札口。
初対面だったが、
「たぶんわかると思いますよ」
と事前の電話で言われていた。
果たして。
遠目でもすぐにわかった。
雑踏のなかに胸が厚くて二の腕がぶっとい人がひとり。
こんな肉体、スタントマンかプロレスラーに決まっている。
高いところから落ちる、車にはねられる、殴り合う。
痛くて怖いシーンをいかにかっこよく作るか。
「ほんとの暴力って、見たことある?」
「……ありません」
「ものすごく地味であっけないんだよ
だいたい1発殴ったら片がついちゃう」
それを、胸躍る拳の応酬に仕上げていく。
その日の取材ノートには「ほんとの暴力は地味」と書いてある。
そうして、そのあと、延々とブルース・リーのこと。