音声マン

2013-01-21

監督とカメラマンが縦横無尽に暴れ回るなか、
音声さんはいつも後ろに控えて
黙々と自分の仕事をする。

森に響くオオカミの遠吠え。
バオバブの幹を流れる水の音。
恥ずかしそうに歌う少女の声。
世界中の音を、落ち着いて確実に録音してきた。

いちばん難しい注文は「風の音」だという。
「何かを揺らしたり、どこかを通り抜けるときに
音がするのであって、風自体には音がないから」

ほほう。
ということは、あのピューとかゴーという声は
いったい誰が出しているのだろう。
わたしはしばし、耳をすます。
その間、音声さんも、黙って同じ姿勢でいる。

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