毛糸屋

2013-01-22

まったくへそ曲がりなオヤジであった。
太さが均一でない毛糸は不良品だとされていた時代に、
あえて太さがまちまちの毛糸をつくる。
ファッション界でモノトーンが流行ったら、
わざと真っ赤な毛糸を売り出す。
「人のゆく裏に道あり花の山、さ」
いつしか田舎の毛糸工場は世界の有名ブランドと取引するように。

「経営が追いつめられるだろ。
そういうとき、ここぞとばかりに
リスクが高いことをやるのさ」
「なんでですか?」
「俺の本能さ」
本能って言われても。
「だいたい、あんた、俺の話を聞いてどうするの。
あのね、他人の成功談なんてクソの種だよ」
そう言いながら、笑っている。
こっちも笑って、4時間くらいかけて
クソの種を拾いまくる。

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