競馬評論家
2013-02-13
「世の中に、ファンにお金を使わせる仕事っていうのはたくさんあるけど、
ファンに実害を与える商売ってボクらくらいじゃないかなぁ」
競馬場近くの純喫茶、
その人は焦げたブレンドコーヒーをまずそうにすすった。
血統を調べ上げ、馬体の仕上がりを確認し、
馬場状態を読んで、新聞に◎や▲や×をつける。
本も出せる。テレビにも出られる。ファンもつく。
好きな競馬で生きていける境遇を、羨ましがる向きもあろう。
でも、誰知ろう、その葛藤を。
「お前(の予想)を信じる」
と言われるほどに、つらさが募る。
「もちろん当たる予想をしたいけど
それだと自分も信じてくれる人もどんどん苦しくなるでしょ。
だからね、はずれても納得してもらえる予想。
結果はずれたけど、その予想は面白かった、という予想。
ボクはもう、そこを目指すしかないと思ってる…」
コーヒーカップが、カチャリと音をたてる。