板金工

2013-01-25

「この前な、目ぇかけてる若い職人がそこそこ大きな仕事をとった言うて相談にきてん。見積もり見せてみぃ言うたら、ふたりで4日かかる見積もりになっててん。『お前、こんなもん8人工(にんく)の仕事やあらへんで。こうしてこうしてこうしたら、ひとりで3日、ふたりだったら1日半もあれば出来るやろ』って教えてやってん。俺はもう、求められたもんを早く作ることにかけては誰よりも工夫するから」

「人工(にんく)」という工事現場用語に宿る荒々しさをうっとり聞いていたが、途中でふと疑問が湧く。仕事が早い職人さんは、少ない人工で見積もりを出して損をするんじゃないだろうか?

「いや、俺はいっつも若いもんに言うてんの。『早く仕上がったからって値引きする必要はない。でもその分、技術でお返しせい』って。たとえば余った時間で施主さんちの看板を板金で作ってプレゼントしたら喜ぶやん。そうやって金かけんと腕で喜ばせることができたら、こっちも嬉しいし、棟梁も施主さんも喜ぶやん」

技術でお返し。腕で喜ばせる。
あぁ、いいなぁ。

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