はたらく動物紀行

実録!犬vs猿の仁義なき戦い モンキードッグ編

2015-11-27

全国各地の畑にドロボーが出没している。多くは、狙いすましたように収穫前夜に現れるという。何ヶ月も丹誠込めてつくった作物がようやく実って、さあいよいよ明日は収穫だ、楽しみだなあと寝ているあいだに全部くすねていくのである。朝、目覚めたときの農家の人の落胆を想像すると涙が出る。許しがたい暴挙。ただちに現場に急行し、犯人の襟首をつんで手錠をかけ、パトカーで連行……したいが、それができないのである。

これが恐るべき実行犯の姿だ。

お猿さん。いや、犯罪者に「お」も「さん」もいらぬ。猿と呼び捨てにする。

やつらの手口はほんとうに巧妙で、60頭つらなってリンゴ畑にやってきて、リンゴをひとつ残らず強奪していったとか、犯行現場を目撃され何も盗らずに一目散に逃げるかと思いきや、ちゃっかりカボチャを両脇に抱え、口にキュウリをくわえて逃げていったとか、寄せられる情報がいちいち憎たらしい。ネギ畑を襲撃したときは、ネギをいっぽんいっぽん引き抜いて、白いところだけをかじって、青いところはポイ捨てしていったというから大胆不敵。

いろんな人のはなしを総合すると、猿がここまで頻繁に盗みを働くようになったのは20年くらい前からだという。それまでは山の中で木の実などを食べて暮らしており、人里におりてくることはほとんどなかった。人間との接触といえば、せいぜい山の秘湯につかって、登山者をほっこりさせるくらいなもんであった。

そういうわけでおよそ20年前から、日本各地の山に接している農村では猿対策に頭を悩ませてきた。畑のまわりに網をめぐらせても、猿はヒョイッと網の裾を持ち上げて、あるいはアラヨッと網をよじのぼって、まんまと侵入してくる。ロケット花火や爆竹で脅しても、一旦は逃げるがすぐに戻ってくる。オオカミのおしっこからできているその名も「ウルフピー」なる動物忌避剤も効き目があるが、もはや日本にオオカミはいない。しばらくすると「なんだ、ほんとのオオカミ、いねえじゃん」と気付かれてしまう。猿の知能を舐めちゃいけない。

電気柵、という手もある。柵に電流を流すのだ。これはお金がかかるが、効果もおおいにあるという。ただし、こまめなメンテナンスが不可欠だ。柵の途中で蔓草が絡まったり木の枝が接触したら、そこでショートしてしまう。その先は「電気の通っていないただの柵」となり、それを察した猿たちはまたもやアラヨッと身軽によじのぼってくる。

あぁ、この恐るべき盗賊団を防ぐことはもはや不可能なのか……。

この窮地を救ったヒーローこそ、「モンキードッグ」と呼ばれる犬たち。前置きが長かったが、本日の主人公は犬だ。そう、はたらく動物といっても、盗みをはたらくほうではなくて、それを追い払うほうにスポットを当てるのが今回の主眼である。

つづく

Noriko Yamagiwa | 2016.11.17 16:21

続きを読みたいです。
家庭菜園を作っている友達は イノシシに悩まされているらしい・・・
生業じゃないから 経済的ダメージは無いにしても、丹精込めて作ったものを
収穫前夜に持って行かれるショックは 農家の人と同じだと思います。

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