塗装工

2013-01-01
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北関東の空は褪せた色をして、
その人の手も白くかさついていた。

「一人前になるのに、こんなに時間かかるやつはいねえ」
と言われ続けて、実際、下積み期間は工場でいちばん長かった。
親方にしょっちゅう叱られて、気持ちはどんどん縮こまって、
この仕事は向いてないんだって毎日思っていた。
あるとき、親方の小言のなかに
「失敗したら、ひとつ前に戻ればいいべ」
というフレーズがあった。

「あ、そうか、ひとつだけ戻ればいいんだ!
というのが、俺にとってものすごい発見だった、です」
かさついた手で、かさついた頬をなでる。
「それまでは、俺は全部だめだと思ってたけど
ひとつ前の行程まではいけてたんじゃねえかって」

気が楽になって、仕事が面白くなって、
どんどん技が身に付いて、ついには車の塗装の大会で日本一に。
「失敗したら、ひとつ戻ってやり直す」
からっ風に、工場の戸、カタカタ。

ももせあつし | 2013.01.01 13:57

ひとつ前に戻る、心に染みます。

うずまき堂 | 2013.01.02 18:56

ももどの、さっそくに嬉しいコメントありがとう!
ももせさん好みの話もいろいろ出てくる予定^^;
お楽しみに&今後もよろしくお願いします。

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