力士

2013-06-20
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お相撲さんが自分より年下だという事実を、つい忘れる。
子どもの頃から相撲好きなせいだと思っていた。
見上げるほど大きな体と、昔風の服と髪型のせいだとも思っていた。

ひんやりと無人の土俵、びん付け油の匂い、奥から若い衆の笑い声。
真昼間の相撲部屋を、弛緩した静けさが支配していた。
そこへ、関取が治療から戻ってくる。
それだけで空気がパッと変わる。
「先生が来た!」の一声で静まり返る教室のような、そんな緊張感。

汗をひと拭き、どっかりとあぐら。
関取という存在を全員が特別視する業界の掟が、
お相撲さんを年齢に関係なく大人に見せるのかもしれない。

別れ際、関取はまるで大先輩に接するように丁寧に頭を下げて
「今日はどうもありがとうございました」と言った。
目尻はあどけなく、頬はつやつやしている。
あ、そうか、私は彼の大先輩なのだと初めて気づく。

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