かつら師

2013-04-12
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畳敷きの作業場に、父と息子。
時代劇のかつらをつくっている。
息子は一日中、あれやこれや威勢よくしゃべり
父のほうはあまり、いやほとんど、しゃべらない。

かつらのことを教えて欲しいと頼むと、
親子は一瞬、顔を見合わせ、
といって特に言葉を交わすわけでもなく。
そのまま息子のほうが立ってきて、
作業場の入り口に山と積まれたかつらたちを紹介してくれた。
「これがお武家さま、
それはお医者さんとか寺子屋のお師匠さん、
あの辺はお姫さま、娘さん、太夫さん…」
敬称をつけて呼ぶ口ぶりに、ほっこりする。

「額のカーブがくっきりしていると厳しい女、
ゆるやかだと優しい性格の女で…」
「あぁ、時代劇は額の形を見れば性格がわかるんですね」
「うん、実際は知らないけどな。
女を見る目は父ちゃんのほうがあるから」
父、うつむいて作業しながら、目尻が笑っている。

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